日本一周に大切なことは『魔女の宅急便』が教えてくれた

日本一周に大切なことは魔女の宅急便が教えてくれた 日本一周

ジブリ映画の名作中の名作。

『魔女の宅急便』

13歳で独り立ちして、知らない街に1年間の修行の旅へ。

ストーリーも素晴らしいですが、魔女のキキの境遇を自分と重ね合わせながら観てしまう人も多いのではないでしょうか?

僕もそのうちの一人です。

僕、大場祐輔は、東京ディズニーランドから721日かけて歩いて日本を一周した経験があります。著書はこちら→『信じた道がいつか本当の道になるようにーガチで徒歩日本一周721日の旅ー」彩雲出版  

 

 

大学を卒業してから旅に出たので、実家を離れて知らない街で生活をしていくという点では『魔女の宅急便』と重なるところがありました。

僕の場合は空は飛べないので歩きでしたが、旅中はこの物語から教わった魔女の宅急便精神は健在でした。

 

「もうちょっとだけ頑張ってみよう」とする感じ

「もうちょっとだけ頑張ってみよう」とする感じ
ラジオの天気予報を聴いて、急遽、出発をその日の夜に決めたキキ。

来週、家族でキャンプに行く為にアウトドア用品を借りてきた親父の事情を軽く振り切るキキ。

当初の予定が1ヶ月後だったにも関わらず「次の満月が晴れるか分からない」という理由で荷造りを速攻で始めるキキ。

「こういうのは慎重に決めた方がいいと思うよ」という黒猫ジジのアドバイスに聞く耳を持たない、決めたらすぐの人、キキ。

序盤からイケイケどんどんで旅立つキキ。

ところが、念願の海の見える街に到着するも、交通事故を起こしそうになったり、警察に事情聴取されそうになります。

街の人からの冷たい視線やよそよそしい態度をとられ、ビジネスホテルに泊まろうとしたところ、未成年だからという理由で断られ、途方にくれます。

序盤のイケイケどんどんだったキキが急にしおらしくなってしまいます。

『魔女の宅急便』で、キキが落ち込みながら考え込んでしまうシーンをよく見かけます。

理想と現実のギャップというか、想定外だった自分の考えの甘さに直面する様子。

僕も旅に出る前はイケイケどんどんでした。

あまり辛いことを想定せずに楽しいことだけ考えて旅に出てみたものの、周りの人からの冷たい視線を感じたり、家出に間違えられて職質もたくさんされました。

大雨の日にずぶ濡れになりながら民宿に泊まろうとして何件も連続で断られたり、野宿で寒さと車の音で眠れなかったり、「何にもいいことねえな」っていう。

知らない土地で生活をすると、誰も知り合いがいなければ、話を聞いてくれる人や自分のやっていることを理解してくれる人もいません。

そのため、自分と向き合う機会がすごく多いです。

魔女の宅急便に名セリフはたくさんありますが、キキのセリフがない考え込むシーンが個人的には好きです。

落ち込みながら色々考えた後に「始まったばかりだし、もうちょっとだけ頑張ってみよう」とする感じ。すごく共感できます。

これが言わずと知れた魔女の宅急便精神なのかなと思います。

 

先輩魔女ではなく先輩日本一周に出会う

先輩魔女ではなく先輩日本一周に出会う

キキが修行に出た夜、修行終わりの先輩魔女と出会うシーンがあるのですが、それに近いことを僕も日本一周で経験しています。

出発したばかりの頃、自転車で日本一周している旅人に初めて出会いました。歳はおそらく40代後半だったと思います。

僕が東京ディズニーランドから歩いて日本一周の旅に出て、まだ間もないことを伝えると、その人はあと1ヶ月ぐらいで旅が終わると言っていました。

「日本一周って大変ですか?」

「まあ、いろいろあったけどね。なんとかなるもんだよ」

別れ際に名前と住所を書いた紙を貰いました。

「何か困ったことがあったら連絡して。君も頑張ってね」

この時、「なんか魔女宅みたいだなぁ」と思いました。先輩魔女というより、先輩日本一周ですが(笑)。

先輩日本一周は、ゴールが見えていることもあり、何かすごく余裕のある感じがしました。

旅が終わる頃の心境はきっとウキウキなんだろうなと思い、単純にうらやましい気持ちでした。

ところが、旅が終わりに近づいた頃、ゴール間近の自分の心境は意外とそうでもありませんでした。

さんざん挫折しそうになったり、「もう辞めたい」と何度も思ったことがあるにも関わらず、いざ旅が終わるとなると少し寂しい気持ちになりました。

「あと、もう1ヶ月ぐらいあってもいいかなぁ」

今振り返ると、旅が終わるのが寂しさよりも「社会生活に戻ってちゃんとやっていけるかどうか」の不安から現実逃避の気持ちもあったと思います。

実は、先輩日本一周もこんな気持ちだったのかもしれないと思いました。

そういう時はジタバタするしかないよ。 歩いて、歩いて、歩きまくる

そういう時はジタバタするしかないよ。歩いて、歩いて、歩きまくる

キキが空を飛べなくなるシーンがあります。

黒猫のジジの言葉が分からなくなり、魔法が弱くなっていることに気がつきます。

「あなた言葉はどうしたの?キキって言ってごらん?」

「にゃー」

「大変!」

室内でホウキで飛ぼうと試みるキキ。しかし飛べない。

その日、土手で夜練するキキ。

スタスタスタッ!

ドサッ!

スタスタスタッ!

ドサッ!

スタスタスタッ!

バキッ!(ホウキが折れる音)

空を飛べなくなったキキはしばらく宅急便の仕事を休みます。
物語の後半、キキがスランプに陥るシーンです。

僕も徒歩で日本一周中に一度だけスランプに陥ったことがあります。

僕の場合は空は飛べないので、歩いて旅をしていたわけですが、前に進む気力が完全になくなってしまったことがあります。

北海道を旅していた時のことです。その日の目的地まで40キロ。

中間地点の20キロ地点ぐらいまで歩いたところで、前に進む気が起きなくなってしまい、元の位置まで引き返してしまうという無意味な行動をとってしまったことがあります。

それも3日間連続。

その日は体力的には40キロ歩いているわけですが、出発地点まで戻ってきてしまっているので、日本一周のルート上では歩いていないのと一緒です。

これはなかなか理解されにくいと思いますが、例えると、登校拒否している子供が勇気を出して学校へ向かうものの、途中で精神的に辛くなって家に帰ってきてしまう感じに近いのかなと思います。

今までは何も考えずに前に進めたはずが、今日歩いたことによってこれからも続いていく長くて辛い旅を自分が受け入れなきゃいけないと思うと、精神的に参ってしまい、前を向けなくなってしましました。

そういう時はジタバタするしかないよ。描いて、描いて、描きまくる」

絵描きのウルスラの言葉です。

歩いて、歩いて、歩きまくるしかない

これをやらなかったら自分にはもう何もない。

結局、歩くことで解決するしか道はないと思い、スランプをどうにか脱却しました。

トンボの誘いをバッサリ断るキキ

鳥人間コンテストのようなものを目指しているトンボにお届け物をしたところ「飛行船を見に行こう」と誘われるキキ。

プロペラ付きのチャリンコで2ケツで海を目指す。

体を傾けないとカーブできないシステムのチャリンコの為、地面のコンクリートに顔面ギリギリまで攻めるキキ。(たぶん地面と顔面の差が2cmぐらい

チャリンコで空を飛んで最終的にコースアウトした後、着地失敗。

トンボの顔を見てツボに入るキキ。

海を見ながら楽しく会話をする二人。

そこで問題のシーン。

オープンカーに乗ったトンボの所属する飛行船クラブの女連中がやってきて「飛行船の中を見せてくれるって」といってトンボを誘う。

「一緒に行こうよ」と誘うトンボに「わたし、いい」とバッサリ断るキキ。

「わたし、いい」とバッサリ断るキキ(←ココ)

日本一周中に住み込みでアルバイトをしていた時のことです。

歩いて日本一周中にバイトをすると、職場ですぐに話題になります。そういう時に必ず一人はいるのですが、日本一周に対して否定的な人論破したがるというか、マウントを取りたがるタイプの人です。

バイト先で仲良くなった人に遊びに誘われましたが、そのグループの中にマウンティングがいたので断りました(笑)。

その時の僕は、毎日、死に物狂いになりながら歩いて旅をしてきて、お金が底を尽きるタイミングで、苦労して住み込みアルバイトにありついたという感じでした。

学生バイトが多い職場だったので「遊び半分で働きにきてる連中とは違うんだ」という気持ちもあったのかもしれません。

のちに和解して一緒に遊ぶようにはなりましたが、自分が真剣にやっていることがあって、その時の気持ちに納得できなければ、バッサリ断ることも時には必要だと思っています。

物語の中で、キキがトンボの誘いを断った理由として一般的な考察として挙げられるのが3つ。

  • トンボに対する嫉妬から
  • ニシンのパイ事件の孫娘がいたから
  • 社会人と学生の違いを感じたから

個人的な考察としては、キキが断った原因の一つとして、飛行クラブの女連中を乗せているオープンカーの運転席の男がキモかったからでは?と思ったのですがこれは僕の考えすぎでしょうか?(笑)。

まとめ

『魔女の宅急便』の裏テーマとして、地方の田舎から離れて、働きながら独り立ちしていく大変さ、昔でいうところの上京」を描いているのではないかと思います。

僕の両親も地方出身者なので、田舎に仕事がなくて仕事を求めて上京して、知らない土地で完全アウェイの中でやってきたという苦労話を子供の頃からよく聞かされていました。

独り立ちして大人になっていく過程に必要な修行でもあるのかなと思います。

僕の場合、実家が埼玉県なので、上京といっても日帰りで行けてしまうレベルだったので、親元から遠く離れた知らない土地で完全アウェイの状況の中、一人で生活することはないんだろうなと思っていました。

ところが、旅に出てから気がついたことがあります。

「知らない土地で完全にアウェイだ」(笑)

そのため、自分の旅が『魔女の宅急便』と重なることが多かったです。

子供の頃に『魔女の宅急便』を何度も観るたびに大人になる前の予習をしているような気になっていたのは、無意識に将来の自分にとって必要だと感じていたからなのかもしれません。

新しい環境にうまく馴染めず、落ち込むことがあっても「もうちょっとだけ頑張ってみよう」と思いながら続けていくことの積み重ねこそが「魔女の宅急便精神」ではないかと思っています。

この記事を書いた人


大場祐輔 1981年埼玉県生まれ。

大学在学中にプロレスラーの大仁田厚が「徒歩日本一周」に挑戦したことに衝撃を受ける。 卒業後すぐに「徒歩日本一周」に挑戦。

2003年、東京ディズニーランドからスタートし、毎日平均40キロの距離を歩き続ける。

旅先でお金が無くなれば、住み込みでアルバイトをして食いつなぎ、スタートから721日目の2005年3月22日、東京ディズニーランドにゴール。 徒歩日本一周をやり遂げた。

同年11月より日本一周記の書籍化のために奔走。 出版社に原稿の持ち込みを開始。

それから5年後、出版が実現。 「信じた道がいつか本当の道になるように―ガチで徒歩日本一周721日の旅―(彩雲出版)」

「俺が断念したことを彼はやりとげた―大仁田厚さん推薦」

 

 

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