他人のそら似。
世の中には自分とそっくりな人が三人いると言われている。
日本一周しながら全国各地をまわっていれば、一度ぐらい他人のそら似と出会うことはあるのか?
東京ディズニーランドから721日かけて歩いて日本一周した経験を持つ俺の実体験から「他人のそら似」について語る。
君は日本一周中に他人のそら似と出会ったことはあるか?
著書はこちら→「信じた道がいつか本当の道になるようにーガチで徒歩日本一周721日の旅ー」彩雲出版
新潟で地元の友達、田中君(仮名)らしき人を見かける
徒歩日本一周中に途中でお金が尽きそうになり、新潟を拠点にアルバイトを探していた時のこと。
新潟に着いたのが12月1日。この先、雪が降ることを考えると、歩き旅を一時中断してスキー場で住み込みのアルバイトをしながら冬を越して、春ぐらいから旅を再開しようと考えていた。
アルバイト雑誌でスキー場の求人を探してみたが、どこも12月中旬以降からの勤務のところばかりで、バイトが決まったとしてもそれまで過ごすお金がないという状態だった。
「どうしようか」と途方に暮れていたところ、30m先に地元の友達、田中君(仮名)らしき人を見かけた。
よく見慣れた「黒縁メガネにぽっちゃり体型」
「あれ、田中君じゃないか?」と思った。
田中君である確率を考察する
田中君は中学時代の友達で、埼玉に住んでいて、東京で仕事をしている。
もしかしたら東京の仕事を辞めて、新潟で暮らしているのでは?と推測した。
なぜならば、
田中君は学生時代から新潟が好きで、毎週、新潟に旅行に来ていた。
当時から「将来、新潟に住みたい」とまで言っていた。
ということは、田中君である確率は高まる。
もし、あの人が田中君で、新潟に住んでいた場合、スキー場のバイトが始まるまでの期間、田中君の家に居候させてもらえば、食いつなげる。
俺の徒歩日本一周の鍵は、田中君本人かどうかにかかっている。
キーマンは田中だ!
俺は「黒縁メガネにぽっちゃり体型」の田中君のもとへ走った。
田中君を追いかけて探す俺
しかし、田中君を見失ってしまった。
まだ、遠くには行っていないはず…。
半径50m以内をくまなく探す俺。
黒縁メガネにぽっちゃり体型‥。
黒縁メガネにぽっちゃり体型‥。
黒縁メガネにぽっちゃり体型‥。
くたくたになるほど歩き回って探した結果、肝心の「黒縁メガネにぽっちゃり体型」は見つからなかった。
田中君に電話して本人かどうか確認する
つい、舞い上がってしまい、忘れていたが「あ、電話すればいいのか?」ということに途中で気がついた。
さっそく田中君に電話したところ、すぐに田中君は出た。
「もしもし、田中君?もしかして今、新潟にいない?」
「えっ、いないよ。俺、今、東京で仕事してるよ」
ということで、人違い、つまり、田中違いであったことが判明した。
「俺、今新潟にいるんだけど、田中君らしき人を見かけたんだよ」
「それって、他人のそら似じゃないの?」
他人のそら似とは?
世の中には、自分とそっくりな人間が三人いると言われている。
ということは、俺が見たのは、田中君のそっくりさんの三人のうちの一人だったのか…。
俺は、かなりガッカリしてしまった。
肩を落としながら歩いていると、さっきの黒縁メガネにぽっちゃり体型の男を発見した。
田中君だと勘違いして俺が追いかけた人だった。
もう用はなかったが、試しにどのぐらい似ているかまじまじと見てみたが、結論としては全くもって似ていなかった。
「黒縁メガネにぽっちゃり体型」という条件は満たしていたが、よく見りゃ全然違った。言っちゃ悪いが「お前、誰だよ?」ぐらいの勢いだった。
知らない土地で地元の友達が住んでいたら、かなり心強かったのに‥。
結局、その後、金銭面はどう工面したかというと、12月中旬からのスキー場のバイトに受かり、仕事が始まるまでの間、同じ系列の会社でタダ働きを条件にメシと寝床を提供してもらうことにより、田中ナシでもなんとか食いつないだ。
今になって思う。
世の中に「黒縁メガネにぽっちゃり体型」は腐るほどいる。
なぜ、全然違う「黒縁メガネにぽっちゃり体型」を田中君と間違ったのだろうか。
おそらくこういうことだと思う。
地元を離れ、徒歩日本一周していく中で、軽いホームシックにかかっていたんだろう。
その結果、「黒縁メガネにぽっちゃり体型といえば、この世に田中君のみ」と勝手に決めつけてしまい、知らない黒縁メガネにポッチャリ体型を勝手に加工して田中君だと思い込んでしまったのだろう。
徒歩日本一周を通して、全国のたくさんの人に出会ったが、「あの人とキャラが被るな」とか、「目元がちょっと似てるな」という人は確かにいた。
ドラマや映画で、同じ役者を使って「死んだはずの恋人が自分の前に現れる」というシチュエーションはある。
しかし、そこまでそっくりな人と出会うことは現実ではなかなか難しい。
タイトルに戻ろう。
「君は日本一周中に他人のそら似に出会ったことはあるか?」
俺はない。以上。
大場祐輔 1981年埼玉県生まれ。 大学在学中にプロレスラーの大仁田厚が「徒歩日本一周」に挑戦したことに衝撃を受ける。 卒業後すぐに「徒歩日本一周」に挑戦。
2003年、東京ディズニーランドからスタートし、毎日平均40キロの距離を歩き続ける。
旅先でお金が無くなれば、住み込みでアルバイトをしながら食いつなぎ、スタートから721日目の2005年3月22日、東京ディズニーランドにゴール。 徒歩日本一周をやり遂げた。同年11月より日本一周記の書籍化のために奔走。 数々の出版社に原稿を持ち込む。
それから5年後、出版が実現。 「信じた道がいつか本当の道になるように―ガチで徒歩日本一周721日の旅―(彩雲出版)」を出版。
「俺が断念したことを彼はやりとげた―大仁田厚さん推薦」