日本一周のような長期の旅に出ると、やはり家族に心配をされることが気にかかるところだと思います。
旅をしている本人としても「心配をかけないように」と気を遣って、なるべくこまめに連絡を入れなきゃいけないような気になります。
今回は「日本一周中に家族に連絡をとる頻度はどのぐらいがベストか?」というお話をします。
家庭の事情などもあるので、正解は人それぞれですが、家族としては毎日連絡を貰えた方が安心すると思います。
毎日が難しければ、3日に1回、もしくは1週間に1回でもいいと思いますが、実際に徒歩日本一周の経験をした僕が推したいのは、不定期です。
僕、大場祐輔は、東京ディズニーランドから721日かけて歩いて日本を一周した経験があります。著書はこちら→「信じた道がいつか本当の道になるようにーガチで徒歩日本一周721日の旅ー」彩雲出版
僕が日本一周していた頃は、毎日家族に連絡を入れていました。なるべく心配をかけたくなかったので。
しかし、あることをキッカケに毎日は避けたほうがいいのでは?と思った出来事がありました。
毎日、その日歩き終えて寝床が決まったタイミングで家族に連絡を入れていました。時間帯は17時から18時の間ぐらい。
家族としても仕事が終わって家にいる時間帯なので、お互いにとっても連絡が取りやすい時間帯でした。
電話よりメールで連絡を入れることが多かったです。
例えば、
「今日は◯◯の民宿に泊まります」
「今日は◯◯で野宿します」など。
※〇〇の部分はざっくりの住所
日本一周をしていると、この寝床探しに苦戦する時があります。
キャンプ場や宿泊施設がなく、野宿できそうな場所を探しながら歩くものの、なかなか良いポイントが見つからない。体力的にも限界が近づいている。
18時を過ぎてくると「何かあったんじゃないか?」と家族が心配するのでは?と思い、僕自身、寝床探しに焦っていました。
その後、歩道のない狭いトンネルがあり、車道をトラックがビュンビュン走っている中、壁に添うように歩いて命懸けで通り抜けました。
実際に徒歩日本一周をしたことがある人は分かると思いますが、トンネルは命懸けです。特に歩道のない狭いトンネルはトラウマになるレベルです。
まず、車を運転している人たちからすると、トンネルの中を人が歩いているとは思わない。
トンネルによっては真っ暗なところも多く、足元は泥で滑って転びそうになることもあります。自転車で日本一周している人たちがトンネル内で転倒して交通事故で亡くなったという話は旅先でよく聞いていました。
徒歩日本一周で命を落とす可能性が高いのは、栄養失調で倒れることでもなく、熊に襲われることでもなく、歩道のないトンネルの中で起きる交通事故がダントツで多いと思います。
なんとかトンネルを抜けたあと、ようやく野宿できそうな場所を見つけたので、テントを張り終えて、いざ家族に連絡しようと思ったら携帯の電波が入らない。
時刻は19時を過ぎている。家族も心配しているだろうから早く連絡を入れないといけないと思い、電話ボックスを探しました。けれど、見つかる気配がない。
ふと、トンネルに入る前に電話ボックスがあったことを思い出しました。
その後、僕がとった行動は、もう一度、あの危険なトンネルを通って電話ボックスまで戻ることでした。
命懸けでトンネルを抜け、電話ボックスにたどりつき、家族に連絡。これで一安心と思いきや、テントを張った場所まで戻るのに、さらにもう一度、トンネルを通らなくちゃいけないと考えたら、愕然としました。
なんとか3回目のトンネルを通りぬけ、テントに戻りましたが、「これで死んだらバカらしい」というのが正直な感想でした。
「家族に心配をかけないように」という思いでとった行動のおかげで、運が悪ければ死んでたかもしれない。後日、このことを家族に話し「毎日連絡するのは厳しい」と伝えました。
日本一周していると、毎日違う土地を移動しながら、知らない土地で寝床を探さないと行けなくなるので、実際やってみるとハードスケジュールです。ただでさえ、携帯の電波が入らない土地もあるし、野宿が続くと充電が切れる場合もあります。
そんな状況で毎日同じ時間に連絡を入れるのは正直いってストレスに感じることが多かったです。
家族の立場からみても、いつもの時間に連絡が来なければ「何かあったんじゃないのか?」と被害妄想することで日常生活の中で冷静な判断ができなくなってしまうこともある。それがキッカケで何かのトラブルに巻き込まれやすくなる可能性もあります。
僕の場合は徒歩日本一周だったので、毎日40キロ以上歩いていました。
体力的にも疲れが蓄積されていくので、日に日に体への負担は大きくなっていきます。何日も人と話していない時など声が枯れていくので、なるべく電話よりもメールで済ますことが多かったです。
電話で枯れた声を聞かれると「体、大丈夫なの?」と余計に心配されてしまう可能性があるからです。
ずっと野宿続きになっていくと「野宿は危険じゃないのか?」と不安な思いをさせてしまうと思い、「今日は〇〇の民宿に泊まります」とメールで嘘をついたこともあります。
旅が終わってから家族に聞いたら「嘘ついてるような気がした」と見破られていることが分かりました。
結局、心配かけないようにと気遣うことで、嘘をついたり、ごまかしたりすることが増えていき、余計に心配を煽っていたような気もします。
毎日、連絡をとっていれば安心かと言えば、何か起きる時は起きる。こまめに連絡をとることで、その一瞬は安心できるが、旅の安全を保つことにはつながらない。
旅をしていて、仮に交通事故で死んでしまった場合、警察から家族に連絡がいくはずです。
旅をしていて何か問題や困ったことがあれば、旅をしている本人がまずは家族に連絡を入れるのが普通だと思います。
逆に言えば「何も連絡が来ないということは、旅は順調にいっている」そう思ってもらえることが、旅をしている側にとっては理想です。
家庭の事情は人それぞれなので、人によって正解は違いますが、あくまで僕個人の考えでは、自分から家族に連絡を入れる頻度は不定期にして、たまに近況報告や業務連絡をするぐらいの方が、旅のメンタルは保ちやすいと感じます。
とはいえ、家族が心配するのは当たり前です。家族からの連絡はいつでも大歓迎というスタンスを持つのは必要です。
家族からすると、連絡を待っているよりは自分からする方が楽なはずですから。(もちろん携帯の電波が入らない、充電が無くなったなどが理由で、連絡が取れなくなることがあるということを事前に理解してもらったうえで)
実際、毎日連絡するという約束よりも、自分自身が安全に旅をすることの方がよっぽど重要です。
トンネル内では、反射板やライトなどを体に装備して車に自分の存在を知らせて、事故に合わないようにすること。
旅をしているときに嫌なことがあっても決してヤケクソにならないこと。トラブルに巻き込まれたり、自分から引き起こさないように常に冷静な判断を心がけること。
体の不調や精神的に限界を感じた時は、絶対に無理をしないこと。一人で解決できない問題は必ず家族に相談すること。
必ず無事に帰って、笑顔で家族に再会できるようにすることを優先するべきです。
せっかくなので、「日本一周中に友達に連絡をする頻度は?」についても書いておきたいと思います。
これも僕の経験上は、不定期をおすすめします。
というのも、自分の旅を振り返ると、友達に頻繁に連絡している時ほど、旅がうまくいってない時が多かったからです。
客観的に見て、日本一周している人は仕事もせずに自分のやりたいことを自由にやっているというイメージがあると思いますが、旅の9割は移動時間で体もきついし、ずっと孤独で寂しくもあり、旅に出る前の日常よりもずっと自由がきかなくなります。
僕自身、旅に出たばかりの頃、友達に電話で愚痴を聞いてもらっていました。旅の様子をネットでリアルタイムで発信もしていたのでアンチも多かったのでなおさらストレスはたまりました。
これが、愚痴を聞いてもらうという行為が続くと依存してしまうことがあります。
感覚的にはタバコみたいな感じ。手持ちのタバコがきれると無性にイライラしたり不安になったりする状態に近い。
友達に何日も連続して愚痴っていたある日、たまたま友達が忙しくて電話に出れない時があったりすると「なんで出ないんだよ。ふざけんな」とイラついてしまったことがあります。
人に頼ってばかりいると、本来、自分の力で乗り越えられるはずの壁をいつまでたっても乗り越えられなくなってしまう時があります。
最終的には自分の足で踏ん張れないと、日本一周は継続はできない。
電話は人の時間を奪ってしまうこともあるので、自分本位の電話は迷惑になることもあります。
それに気づいてからは、自分から何度も友達に連絡するのは控えて、自分が決めた旅に集中することにしました。
最後に「日本一周中に恋人と連絡をとる頻度は?」についても書こうと思ったのですが、これは僕自身、旅をしていた時に彼女がいた経験がないので分かりません(自分で考えて)。
恋愛をしている時に交際相手と毎日連絡を取っていたある日、急に連絡が来なくなったりすると不安になったりソワソワすることはありませんか?無駄に被害妄想してしまったり。
こまめに連絡をとることで起こりうるデメリットを忘れてはいけません。
日本一周していて遠く離れていたとしても、本当に会いたくなったら乗り物を使えば一日で会いに行ける距離です。
どんなに離れていても空はつながっています。

大場祐輔 1981年生まれ。 大学在学中にプロレスラーの大仁田厚が「徒歩日本一周」に挑戦したことに衝撃を受ける。 卒業後すぐに「徒歩日本一周」に挑戦。
2003年、東京ディズニーランドからスタートし、毎日平均40キロの距離を歩き続ける。
旅先でお金が無くなれば、住み込みでアルバイトをしながら食いつなぎ、スタートから721日目の2005年3月22日、東京ディズニーランドにゴール。 徒歩日本一周をやり遂げた。同年11月より日本一周記の書籍化のために奔走。 数々の出版社に原稿を持ち込みを開始し、断られる。
それから5年後、出版が実現。 「信じた道がいつか本当の道になるように―ガチで徒歩日本一周721日の旅―(彩雲出版)」を出版。
「俺が断念したことを彼はやりとげた―大仁田厚さん推薦」