東京ディズニーランドから徒歩日本一周の旅をスタート。
金がなくなっては住み込みのアルバイトを繰り返し、出発から約二年後に東京ディズニーランドにゴール。
今回は、ゴールする一週間前に思ったことを書きたい。
スタートしたばかりの頃は「一体、いつになったら終わるんだろう」と思いながら歩いていた。
とんでもなく果てしない旅だったはずが、ついに残り一週間。カウントダウンできるところまできたのだ。
このまま歩き続ければ旅が終わる。
交通事故や災害に巻き込まれない限りは、確実にやり遂げられる。
ようやく、この長い旅に終止符を打つことができる。
そんな時、ふと空を見ながらこんなことを思った。
「あと一ヶ月ぐらいだったら、このまま旅を続けてもいいかな」
そう思ったのは、自分でも意外だった。
というのも、東京ディズニーランドから出発した時からずっと一貫して考えていたことがある。
「一日でも早くゴールしたい」
日本一周の移動手段に徒歩を選択する人たちには、大きく分けて二つのタイプが存在する。
①旅そのものを楽しみたくて、できるだけ長くゆっくり旅をするために移動手段に徒歩を選択した人。
②旅そのものを楽しみたいというよりも、単純に過酷な旅に挑戦をしたという実績を作るために移動手段に徒歩を選択した人。
自分の場合は完全に②だった。どれだけ早く終わらせられるかを考えていたと思う。
毎日40キロ以上の距離を歩き続けることは体力的に厳しい。本当は一週間に一回ぐらいは足を休める日があった方が良い。
しかし、一日でも休むことによって、ゴールが一日遅れる。
旅に出たばかりの頃は、ほとんど休みなく歩き続けていたし、なるべく寄り道をしないで前に進むことばかりを優先していた。
金がなくなって住み込みのアルバイトをしていた時も、前に進めない時間にどこか後ろめたさのようなものを感じていた。
この二年間、楽しかったこともあれば、辛かったこともあったけれど、天秤にかけると辛いことの方が断然多かった。
「一日でも早くゴールして、すぐにでもこの辛い毎日から解放されたい」
これが本音だった。
ところが、ゴールまで残り一週間というとこまで来て、「ようやく終われる」と思う反面、「もう終わっちゃうのか」と、ちょっと寂しい気持ちになっている自分がいた。
特にやり残したことがあるわけでもない。
精神的にも体力的にも自分の限界以上の力を発揮できたという自信はある。
では、具体的に「旅が終わること」について、一体どの部分に寂しさを感じているのか?について解説したい。
旅に出たばかりの頃は、葛藤の連続だった。
徒歩で日本一周するという、あまりにも無謀すぎる旅に「やっぱりバカなことはするもんじゃないな」と思って旅に出たことを後悔していた時期があった。
「もう辞めたい」と思ったことは何度もある。辞める言い訳を考えながら下を向いて歩くことも多かった。
旅を続けていく中で、いくつもの困難を乗り越えていくうちに、歩けば歩くほど前に進めることを実感できるようになっていった。
いつしか「途中で辞める」という選択肢がなくなった。
「俺ならできる」という確信に変わった。
この頃ぐらいから、しっかり前を向いて歩けるようになった。
ついにゴールまで残り一週間。
ここまできてようやく自分の中で再確認できたことがある。
自分を信じてきたからこそ、ここまで来れた。
自分が選んだ道は、やっぱり間違っていなかった。
心の底から「やって良かった」と思えた。
旅が終わる前にあともうちょっとだけ今の気持ちを噛み締めながら歩いていたい。
そう思えたらこそ、旅が終わることにどこか寂しさを感じたんだろう。
↓最後にこの部分についても触れておきたい。
「あと一ヶ月ぐらいだったら、このまま旅を続けてもいいかな」
そう思ったのなら「ゴールを先延ばして、本気であと一ヶ月間、旅を続けたいのか?」と問われれば、決してそういうわけではない。
そして、ここからは完全に言い訳に入る。
この時の俺の「あと一ヶ月ぐらいだったら」とは、ざっくり一ヶ月未満(三週間ぐらい)を指す。
つまり、微妙なさじ加減で延長を希望している時点で、ちょっと適当な感じというか、正直、心の中で口を滑らしてしまった感はある。
ゴール目前にして、多少イキってしまった可能性はあるかもしれない。
補足として「あくまで例えとしてね!」「実際やるわけじゃないよ!」「ちょっと思っただけだから!」「もう俺、とっくに限界超えてるし!」という当時の本音も付け加えておきたい。
それから一週間後。
そのまま普通にゴールして俺の旅は終了した。

大場祐輔 1981年生まれ。 大学在学中にプロレスラーの大仁田厚が「徒歩日本一周」に挑戦したことに衝撃を受ける。 卒業後すぐに「徒歩日本一周」に挑戦。
2003年、東京ディズニーランドからスタートし、毎日平均40キロの距離を歩き続ける。
旅先でお金が無くなれば、住み込みでアルバイトをしながら食いつなぎ、スタートから721日目の2005年3月22日、東京ディズニーランドにゴール。 徒歩日本一周をやり遂げた。同年11月より日本一周記の書籍化のために奔走。 数々の出版社に原稿を持ち込みを開始し、断られまくる。
それから5年後、出版が実現。 「信じた道がいつか本当の道になるように―ガチで徒歩日本一周721日の旅―(彩雲出版)」を出版。
「俺が断念したことを彼はやりとげた―大仁田厚さん推薦」
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